君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「私、あの人と慧ちゃんを共有する事なんて出来ない。」
ちゃんと見よう、慧ちゃんの顔を………
「慧ちゃんは、あの人が会社の飲み会は男の人ばかりだからって、自分から迎えに行くのに、
私が課長の車に乗ったところを見ててすぐその場で電話してくれなかったの?
私が帰って行くのをどうして黙って見送って家に帰った頃を見計らって電話してきたの?」
ほら、こっちを見ようとしない。
「あの日、和音さんを迎えにいって次の土曜日曜私と会わないで、何してたの?
私が勝手に家に来ないように用事が出来たって言っておきたかったんでしょ」
「…………」
「私の嘘の何倍も嘘ついてるのは慧ちゃんの方じゃない……………」
「万由…………」
ザァッ……と急につむじ風のような風が吹いた
思わず自分で顔を覆ったけど、隣の慧斗に肩を引かれ風避けに頭を彼の胸に埋められた
「あ…………ありがとう」
久しぶりに慧斗の体温を感じて背中からキュンッとする自分に、思わず目尻が熱くなった
動揺する気持ちを隠すように、大丈夫だと身体を離した
舞い上がる髪の毛を押さえながらすごいねと、笑い合う事も出来なくなるんだ………
「……………それでも俺は、万由と一緒にいたい」
離れて俯きながら髪を直す万由を見て呟くようにそう言った慧斗
「……………っ」
「万由は俺がいなくても平気………?」
そう聞かれて、俯いた瞳の中にに溜まる涙
ぐぐっと拳を作った両手に痛いほど力を入れた
平気なわけない………別れたくない
でも…………
「平気じゃない、けど………時間が経てば今より楽になると思う」
とても顔見て言えない……気持ちを殺して言わなきゃいけない
「……………」
「後悔するかもしれないけど、今は楽になりたい…………からっ」