君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「高石、万由はダメよ。もう他からちゃんと唾浸けられてるんだから」

「なっ………?!」


「えっ、じゃあやっぱりあの話本当なんだ」

歩美に問いかける様に高石が身を乗り出す

「あの話?」

万由も歩美も首を傾げる


「沢村さんは浅野主任のお手付きだって………」


え……………はぁっ?!

「なんの冗談よそれ…………」

どどどどっからそんな話に…………


「どっから見たって特別だろ、沢村さんって浅野主任のぉ」


「…………」

「…………」

万由と歩美の頭に、呑気に万由に手を振る浅野主任のニコニコした顔が浮かぶ

「そんなのっ………」


「あっ」

全身で否定しようとしたのに、高石は急に視線を外に向けた

「後藤課長っ!」

手を振る高石の先を見れば店の外を会社に向かって歩く後藤がいた


「!!」

窓際近くの席で手を振る高石にはすぐに気がついた後藤がこちらを向いた

そして、高石の向かいに座る万由に視線を向けると、一瞬眉をひそめた

「あれ…………?」

温厚な後藤が見せたその表情に高石が怯む

窓越しの後藤は、後ろから呼び止められたのか、その場で足を止め後ろを振り返り、そこにさっき話ていた山吹薫が駆け寄ってきた


「あ…………」

目の前で後藤の腕に絡み付く山吹薫



へぇ………縁談断っても仲いいんだぁ
何かそうゆうもんなんだ、男の人って………


『俺は好きだよ。沢村さんの全部、好きだから………』

……………そんなの嘘ばっかりじゃん
あんなに堂々と腕なんか組んじゃって………



そのまま二人が会社に行くのを見送った

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