君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「………沢村さん?」
「一人になっちゃったしっ…………」
後藤課長のせいじゃないのに………
まるで八つ当たりのように投げ遣りに言い放つ
時間だけが勝手に経っていくから、なんか私は取り残されているようで、歩美さんにさえ置いていかれているような気がする
「俺は一人になんかしないよ」
「………………っ」
別に、そう言って貰いたかったわけじゃないんだけど
でも、すごくズルいかもしれない…………
さりげなく重ねてきた大きな節のある手に、キュッと力がこもる
それを何故か、私には払い除けることが出来ない
そんな心も、ないかもしれないのに…………
「居たぁぁっ!!」
重なっていたその手を瞬間で離すと、
その声の主が後藤の腕を引っ張った
「佳樹さん、皆さん待ってますよ」
そう言いながら、横目で万由をみる山吹薫
「いや、ちょっと今沢村さんと………」
「後藤課長、私は大丈夫ですから戻ってください。私も元の席に戻ります」
真っ直ぐ後藤を思う彼女の瞳
慧ちゃんと別れて寂しくて仕方のない私なんて、彼女に対して失礼だ…………
「え………あ、待てって………」
そのまま、二人から視線も向けずに立ち上がって、なにも言わずに宴会場の元の席にへ戻ろうとした
が、途中彼女の手を振り切ったのか万由の腕を引っ張り、耳元に口を寄せてきた後藤
「後、送って行くから。最後待っててっ」
「……………っ」
一瞬、近すぎる距離にカッと熱くなった
腕を離し、戻りながら手を振る後藤の先で山吹薫に睨まれたまま、少し彼の息がかかった耳を押さえた