君が好きになるまで、好きでいていいですか?
暫くして二人を外で待っていると、
後藤を抱えた浅野が宴会場の出入り口で、なんだか山吹薫と揉めていた
咄嗟に視界の入らない場所に隠れた
「私が送って行きます。由哉さんだって酔ってるじゃない」
「ダメだよ。君にこいつの世話させたら襲われちゃうじゃないか。いい加減諦めなさい」
まるで子供が叱られたように頬を膨らます薫
「どうして私に協力してくれないの?従妹じゃない………」
浅野の顔も幾分優しさがみえる
「ヨシには大きな貸しがあるからね、恋愛に関しては君に協力出来ないんだよ」
「……………」
「一花さんが離婚したこと私、知ってるんだから…………」
一花さん………?
「それに関しても君には関係ない話だろ」
話が急に深刻な雰囲気に変わったので、
とりあえずその場から少し先でタクシーを待たせ、小さく顔をだして薫に気付かれないように浅野に合図を送った
「送っていく手伝いなら山吹さんでも良かったじゃないですか?」
タクシーへ乗り込んで後藤のマンションへ向かう
「ははっ、彼女にヨシの家がばれたらそれこそ押し掛け女房になっちゃうよ」
普段の会社での『後藤』の呼び方が『ヨシ』と変わってる辺りは、少し気が抜けている様子だ
「そんなの万由ちゃんも嫌だろ。ヨシだって男だから何があるか分からないし」
そう言う浅野に一瞬自分の心の中を覗かれたみたいだった
「べっ…………別に、本当に山吹さんが課長を好きならその方が幸せなんじゃないですか?山吹さん美人でお嬢様だし」