君が好きになるまで、好きでいていいですか?

『ヨシ?』

黙り込んだ後藤に浅野の心配そうな声で呼び掛けられる

「ああ………いや、別に俺に気を使わなくても、お互いいい大人だし…………」


『まあ、そうなんだけどな……』


先輩が彼女を受け入れる事に俺がとやかく言う事はない


連休地元へ帰った時、彼女が今年の2月頃離婚したらしいと聞いた

その事に対し、それほど驚きもしなかったし、じゃあ会いたいとも思わなかった


「離婚した事は聞いてたから…………ってまさか離婚する前からじゃあっ」

思わずそう言うと、電話口から慌てて否定された


『一花がこっちの友達の結婚式で来てた時に偶然会ったんだ』


……………へぇ
偶然こっちに来てたその日に先輩と再会……ってなんか、二人の運命的なものを感じるな


そんな風に思いながら、声に出さずに心のない笑いを浮かべた


「そうなんだ………本当に俺の事は気にしなくてもいいから」

向こうの電話口で浅野が小さい息をついた

『ヨシはやっぱり一花には会いたくないか?』


「…………いや」

会いたくない訳じゃないが、会ってどうという訳でもない

でも、何を言っても推しきられそうだなこの人は

「わかったよ、別にいいよ。近況報告的な話しか出来ないけど」


昔話なんか出来るほど、悪いが人間出来てないもんでな…………


『もちろん』

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