君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「沢村さん、お昼はどうしてるの?
お弁当?それとも食堂?」
「えっ、あぁ……お弁当なんですけど、友達と待ち合わせて食堂で」
「あ、そうねっ」と桜井さん私に気を使ってくれてるんだ………
結構いい人じゃん
「ちなみに、彼氏はいるの?」
「へっ?」
ニコニコしてるけど、なんか誤魔化せそうにない感じ
「…………いません。でも、好きな人はいます」
「え~誰々?! 社内の人?!」
あの…………仕事しなくていいんですか?
「桜井さん、その話は僕も聞きたいけど今は辞めとこうか。忙しいから沢村さんを呼んだんだよ、仕事しようね。」
桜井亜沙美の後ろから、書類の束をもってそれを彼女に渡しながら後藤課長が会話を遮ってきた
「はぁ~い」
「沢村さんは取り敢えず会議室の準備を手伝ってくれるかな」
会議室の設営の手伝いに向かう途中、何度も後藤課長が他の社員に呼び止められ、
結局指示をもらい、スライドのセッティングや配布する資料の配置、やる事はやっぱり企画部と一緒だ
「あ、ごめんね。終わっちゃった?
さすが噂通りやる事速いね沢村さんは」
「噂?」
ゆっくりとスライドの資料を整え始めて光の調子を見る後藤
「浅野主任に聞いてるよ。仕事が速くて頼もしい子だって」
「浅野主任から?」
「ああ、あの人とはよく飲みに行くから、大学の先輩なんだ。同じサークル仲間で、この会社に引っ張ってくれて………ってあんまり興味無さそうだね」
やる事が終わってしまったからやる作業もなく、聞いてるだけだったけど
「いえ……」
ただ、なんかスマートだなって
ここへ来る途中、いろんな人に声を掛けられて、その都度止まって丁寧に話をして……
この人の信頼性に感心させられたのと、資料をまとめる手とか、機械を触る様子が何て言うか優しい?
そんな表現……………自分の説明力の無さを思い知らされるけど
「あっ、でも個人的に沢村さんのことを先輩に聞いた訳じゃないから。あくまで会話の中での話だから………」