君が好きになるまで、好きでいていいですか?
ってそうじゃなくて………


「あの、なんか注目されてます」

「そう?」

顔を下げたまま目だけ後藤に向けて、小声になる万由
そんな周りを全く気にしない後藤

「………なんでいきなり名前呼びなんですか?」

「付き合ってるッポイだろ?俺の脳内では既に名前呼びだったから」

脳内ですと………?

瞬時に過る後藤の酔っぱらった時の寝言に思わず赤面して、その顔を俯せる



「…………っ」





テーブルは8人座りで、既に食堂は満員状態
歩美さんがどこにいるか、さりげなく辺りを小さく見渡してみる

今更ながらやっぱり歩美さんが一緒にいれば良かった




「木原さんとは本当に仲いいんだね。」


「歩美さんですか? 入社してから何から何まで教えてもらってますから」

話題らしい話題をふってもらって少し気が紛れた

「少し気になったんだけど、お互い敬語とか使わないよね先輩後輩なのに」

あ…………それ、気付いてたんだ

「ダメなんです。歩美さん、私が歩美さんに敬語使うと『デコピンの刑』だって」

今の部署に配属になって、歩美さんと仲良くなった時に「敬語を使われるとなんか疲れる」って決められた約束
「敬語使ったら『デコピンの刑』ね」って

あの頃は本当に私のおでこが割れるか、歩美さんの爪が割れるか、どっちが早いかなんていってたっけ………


「デコピンの刑…………?」

万由が自分のおでこを指差すと「ブッ……」っと後藤が吹き出すのを堪えている

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