君が好きになるまで、好きでいていいですか?

肩を竦める後藤に、万由は視線を逸らして

「とりあえずそのまま、後藤さんで………」

そう改めて言うと照れ臭そうにする万由の顔を覗き込んだ


「…………ま、いっか。じゃあはいっ」

「?」

徐に携帯を差し出す後藤に、また首を傾げた

「携番の交換。まだだったから」


あ………そっか、そうだった
そう思って万由も携帯をだして交換した


「…………いいなぁ………」


その様子を、どこかから見ていた女子から溜め息のような呟きが聞こえてきた



普通はイケメン彼氏ができたなんて、浮かれるところなのに、
基本仕事が忙しい後藤さんと時間が合う事も少なく、たまのメールのやりとりは、ランチの御誘いくらい

お弁当を作ってきてみたり、食堂か外で一緒にランチをしたりする程度で



たまに営業部から忙しく出てくる姿を見掛けると、改めて確かに『仕事の出来る男』って感じで、
今まで御姉様方が見とれていたのも分かる気がしてきた

もともと私との社内の距離感ってこんな感じだったんだ

やっぱりこの人はどうして私なのか、解らない


社内では付き合ってる事にしようって言っても、一緒にいるとテンパっちゃって実感わかないよぉ………


「万由っ」


会議が終わった後だろうか、スーツ軍団の中に彼の姿を見つけて、何となく忙しそうだなぁなんて思っていると、それに気付いた後藤が躊躇なく声をかけてきた

「おっ、お疲れ様です」


こっちに近付いてくるその後ろからの視線が気になる

「今日、7時には終わりそうだから、どこかに食べに行ける? 向かいのカフェで待っててくれる?それとも用事があった?」

「えっ、いえ大丈夫です。あ………でも本、そう本屋に行きたいから駅前の本屋で待ってます。」


あんな会社の前のカフェなんか目立って仕方ない………


< 166 / 333 >

この作品をシェア

pagetop