君が好きになるまで、好きでいていいですか?


「……………」



入口の扉に手を掛け、足を踏み入れようとする後藤のスーツの背中の裾を引っ張る

「んっ?」


「あの……」

慧ちゃんの会社からも2駅先なんだけど、
慧ちゃんと鉢会わせとか、一度会ってるあっちの会社の人が居たりしたら…………
だから、ここに入るのは嫌だ


「どうしたの?」

入るわけにはいかなくて俯く万由の顔を、覗き込む


「あの…………私、ラーメン食べたいですっ!」

「えっ、ラーメン?」

「そうっ、きっ今日はなんかそんな感じで、だから………」

ここじゃないところに行きたい……………



店の前で立ち往生している私たちが邪魔して、入り辛そうに近付いて来た客を、一瞬ビクリッと見送った万由

後藤は万由とそのまま入口から離れ携帯を取り出し調べ始めた

「会社の方へ戻るけど、いい?」

「え、はいっ、大丈夫です。」

ホッ、としながら駅に戻る後藤の後についた

考えてみればなんて我が儘な事を言い出したんだろう。

場所を決めて店まで来たのに…………

ついて行きながら、だんだんと罪悪感が募っていく



「……………」



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