君が好きになるまで、好きでいていいですか?

電話は会社からだろうか、戻ってきてソファーに置いてあるケースから書類を取り出している

持ってきた書類に何かあったのかな………


後藤が電話をしている間に気持ちを落ち着かせた

思わず出てきた涙に自分でも驚いていた

…………泣くなんてズルい

決して嫌だったわけじゃない
大体、キスだってほぼ了承したのは私なのに


怖かったのは、引き込まれそうになった自分


「はぁっ………」


敏感に反応して、その先を期待するような感覚

思わずその訳の分からない恍惚感、その恥ずかしさと不安が自分でブレーキをかけた

結果的に後藤を拒否した事になってしまった




「………わかったよ、俺が明日直接持って行くから。……………ああ、やっておく。お前も程々にして帰れよ、じゃあ…………」


「……………」



そういえば差し入れ…………

その場を立ち上がり、持ってきた差し入れのスポーツドリンクを後藤に渡そうとコンビニ袋を開いた

このまま帰ったら、また次に気不味くなったりしないかなぁ…………


「……………」


「万由?」

電話を終えた後藤がコンビニ袋を見ながら固まる万由を覗き込んだ



「後藤さん、今日何かお腹に入れました?」


「え? いや、日中ほとんど寝てて……………
水分は取ったよ、食欲ないから」


さっきの電話からしたらこれから私を駅まで送って、書類をまとめて夜中まで取引先への資料作って、明日朝一でプリントして先方回りをするつもりだろう………

まだ熱があるのに…………


「冷蔵庫開けていいですか?買ってきたプリンと飲み物入れておきます。それと………」

身なりを整えようと洗面所に向かいながら返事をする後藤を横目に、キッチンを簡単にチェクした


「何か作りますね。お腹すきました」



「えっ?!」


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