君が好きになるまで、好きでいていいですか?
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それは、一瞬の気の緩みだったのかもし
れない
「…………ごめん」
「なんで謝るんですか………」
彼氏と同棲を始めて1年半以上たった頃で
…………だいぶスレ違い生活が板についてきていた
付き合い始めたのは高校2年の夏だったし、それ以前から御近所さんの幼馴染みで
勝手知ったる仲だけに、甘い恋人同士の言葉さえ今にして思えば覚えがない…………
でも、お互いが周りの人間関係の中で一番気におけて、安心出来る存在だと思っていた
言いたい事だって言えるし、言ったからって嫌いになるほど薄い関係じゃない
それに、初めてのキスや身体を重ねた時の事は、今でも宝物のような記憶だった
それなのに…………
接待で、酔った彼を連れて帰ってきてくれた彼の先輩
先輩とは彼が大学時代からの縁なので、割りと仲が良かった
たった2年歳が上なだけなのに、やけに大人びたその人は、引き込まれていくほど整って爽やかで物腰の柔らかい美形だった
「一花ちゃんは偉いね」
ダイニンクテーブルに置かれたラップのかかった食事を見て言ったのだろう
「お互い忙しいから佳樹の分はいいって言われてるんですけどね…………」
「作らないのも寂しいよね。一緒に住んでるんだから」
そう言って頭を撫でてくれた
きっとこんなこと、この人には当たり前の行動なのだろうと思うのに、なのになぜか涙が出て
止まらなかった
「…………っ」
近付いてきたその人が、俯いて目を擦る私の手を退けるように掴んで
初めは頬に、次に瞼に
そして、顔を押し上げるようにゆっくり重ねて来たキス