君が好きになるまで、好きでいていいですか?
『一花、取りあえず一度帰ってこないか?』
佳樹からそう電話がきたのは、彼のところから出て2ヶ月ほどたっていた後だった
いい加減心配になったのだろう。
今、由さんのとこからもまた飛び出して友達の所にいる私に…………
『お前の友達から、そこにいる事を連絡してきたんだ。調子が悪そうだが、保険証はまだうちにあるだろ?だから病院にも行けないって…………大丈夫なのか?』
「………大丈夫」
由さんと一緒にいて分かった事は、彼が会社の副社長で、いづれ社長になるという事
暫くして、由さんが1ヶ月間の海外出張に行った次の日に、彼の婚約者がマンションにやって来た
彼女は私に言った
『いつか別れるのが分かっているのなら、早い方がいいんじゃない?』
その婚約者は、まだ二十歳の大学生で、今はまだ彼は結婚するまで遊んでいるだけだと
『分かるでしょ。由哉さんはモテるから貴女みたいな女の人はまだ何人かいるのよ』
彼女の言う事を決して本気にした訳じゃないのだけど、なぜだか怖くなった。
自分がアッサリと由さんを好きになって、そして異常に周りが見えなくなってしまっていた事に気がついたからだ
これからずっとこんな風に小さい不安を感じていくのを
トキメキを感じながら幸せの中にある不安
そんな生活に憧れていたはずなのに
勝手だよねぇ………変わりたくて飛び込んだのに
でも、もう十分変われたし
身体の変化に気がついたのは由さんのとこを出てからだった
いつの間にか居た私の中のもう一人の由さん
「佳樹、由さんの婚約者の事知ってた?」
『…………会社でそんな噂があるのは聞いた事があるが、俺がそんなこと今あの人に聞けるわけないだろ。お前が先輩の所を出ている事も知らなかったんだから………』