君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「なんだ、御一緒だったんですか?」

「へっ?」

翔さんが私の後ろに視線を向けた


「いや、偶然だよ。一花が入って行くの見えたからさ」


「っ!!」

聞き覚えのあるその声に、おそるおそる
振り向いたらそこに由さんがいた



「久しぶり」

昔のままの笑顔を向けてくれた

本当に、あの出張に行くために玄関を出た時の「行ってきます」と私に向けた最後の笑顔


「……………」

言葉がなかなか出なかった


「今日、ブルークラウンホテルにいたよね。友達の結婚式だったのかな」


あ…………気がついたのは私だけじゃなかったんだ

コクンっと軽く頭を下げ
カウンターの席に二人並んで座った


「こっちでこの時間に飲みに来てるってことは、ホテルでもとってあるの?」

「…………うん」

どうしてそんなに自然に話せるんだろう………
私の心臓はもう破裂しそうなのに

「…………もしかして、旦那さんと待ち合わせとか? 一花結婚してたんだよね」


ふるふると首を振った

「一花?」

………名前を呼ばれるだけで涙が出てきそう
グッと下唇を噛んだ


「最近、離婚したの。相手に他に好きな人ができたって………」

「…………」

「きっと私、どこかにネジを落としたままでポンコツなんだよ、ポンコツ人間。
元の旦那に言われたの、
『君との生活は、いつまでたってもパズルが完成出来ない、そんな感じだ』って」


頭が悪いから、意味わかんないんだけどね
って笑って見せる

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