君が好きになるまで、好きでいていいですか?
昔から自由奔放な彼女の事だから、極力お互い束縛しないようにと心がけていた俺の態度が引き金だったと思う
だから家を出た次点で、凧の糸が切れたように俺の事なんか忘れてしまったと思っていた
「今度は先輩と、上手くやっていけるのか?」
「…………どうだろう。実際向こうが優位に立ってるからなぁ」
まあ、そうだろうな。よく飼い慣らされてるみたいだし
昔より歳をくったからなぁ…………
あの頃は若かった的な
「私といるのって、実はただの同情だったりして………」
飲み干したシャンパングラスをコースターに置いて、はははっと自嘲するように笑う
「……………」
その様子にまた溜め息をつく後藤が静かに口を開いた
「…………じゃあひとつだけ教えてやるよ」
一花が倒れて実家に帰って暫く後、先輩は長期間の出張から帰ってすぐ俺のところにやって来た
ずっと一人の女の為に仕事以外では喋らなくなっていた先輩が
「お前、一花をどこにやったんだ!」
そう積めよってきた
当然、始めは何も答えなかった俺だったが………
今までにあんなに取り乱し、憔悴した先輩を見るのは初めてだった
普段人の足元ばかり見てる癖に正直驚いて、初めてこの人が本気だったんだと思った
「…………っ」
浅野のその時の様子を一花に今更ながら伝えた
お前が、あのいつも余裕ぶっこいている人を見事に振り回したんだ。
少しは自覚しろ
そして、勝手に幸せになりやがれ