君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「じゃあねぇ~っ 万由ちゃん、佳樹ィ~」
機嫌良く帰って行く一花と、一緒に軽く手を振る浅野に「お疲れ様でした」と見送った万由
「お代は由さんに頂いてますから、もう少し飲みますか?」
二人を座ったまま見送った私たちに、なぜか少し気を使いながら後藤さんにそう語りかける翔さん
「…………じゃあ、一杯だけ」
そう言って、もう一杯軽くロックグラスのお酒を流し込んだ
「帰ろっか」とゆっくりと席を立つ後藤
「またね」と翔さんに見送られ二人でBar を後にした
地下にある階段をあがり路地に出ると、向こうの方にある駅への大通りに週末の賑わいがみえる
そこまでの間、暫く続くホテル街
微妙な人通りを歩きだした
そんな中で後藤に顔を覗き込まれる
「少し顔が赤いね。万由も飲み過ぎた?」
店内の心地好さからの外の暖かさに、自然と身体が湿気と絡み付く
「大丈夫です。とっても楽しかったからまだちょっと興奮しちゃって…………ふふっ翔さんの話も相変わらず面白かった」
初めて【Room】に浅野が後藤を連れてきた時、この人(浅野)は同類だと思った翔さんの勘違いの理由とか
カウンターで眠り込んだ浅野に何度キスをしたかとか、それを目撃した後藤のリアクションの再現
どの話も笑わずにはいられないでもう、お腹の腹筋がフル活動だった
「それに、何だかまたちょっとイメージの違った主任を見た感じです。」
「先輩が? そう?」
「ええ、会社での主任や琉成君といた時とか……」
やっぱり少しお酒のせいなのか、いつもより口が軽い
「あれ?万由は先輩の子供の事まで知ってるの?」
あ………と思いながら前にカフェで出会した事を恐る恐る話してみた
「大丈夫、俺もその辺の事は全部知ってるから」
そう言って笑った後藤を万由は見上げる
「ん?」
ジッと瞬きもしないで見つめながら、腕のスーツを掴んだ
「後藤さん、大丈夫ですか?」