君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「無自覚なのにそうやって煽ってくるんだな………」
「へっ…………?」
次の瞬間、腕を引かれ身体がふわりと浮き上がるように持っていかれ
自分の心臓が信じられないくらい羽上がった
人通りが少ないその路地の影に隠れるように大通りから背を向けた
息が掛かるくらい近いきょりに、整っている清淡な顔があった
「あ…………」
「…………キスしていい?」
なんで聞くの?
答えを待つほどの隙なんてないじゃない……
そんな言葉を飲み込んだまま、抵抗の意なんて聞くつもりもなく顔は傾き唇が優しく重なった
少しだけ、さっきまでの一花への後藤の顔が浮かんだけど、
自分がこんな路上でのキスに躊躇しないで受け入れてる事に思考がいっばいになった
さすがにホテル街の路地では、誰も見てみぬふりをして通り過ぎる
優しく唇を啄むように絡み付き、深く濡れた唇に神経が集中する
静かに離れていく唇から目を逸らし俯くと、頭の後ろを押され、顔を彼の胸の中に埋められた
心臓のドキドキが同調して、どちらの音からか分からない
そっと後藤の背中に手を回した
頭を優しく撫でられ
そのままの体制で、後藤が口を開いた
「万由………明日なにか予定ある?」
「えっ?」
明日は土曜日
特に予定もなく、いつものように食材の買い物や部屋の掃除、溜まった録画を見るくらいだけど…………
一応これといった約束はないため、胸の中で、ふるふると首を振った
「じゃあ……………さ」
顔を上げると同時に、万由の鞄の中から携帯の着信の音がしてきた