君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「沢村さん、悪いけどこの資料もう一回見直してくれる? 一枚目から3ヵ所も間違いがあるから………」
「…………すみませんっ」
定時まであと1時間、昨日昼一から作った資料をいつもより時間が掛かったあげく見直しを言い渡された
仕事に集中、集中しなくては………と、思いつつ昨日の桜井さんの話が気になって仕方無い
『彼女って、後藤課長とは浅野主任がらみで結構繋がりがあるらしくて、自分は彼の特別なんだって昔から言ってたわ。』
特別………?確か彼女は後藤さんとの縁談話を断られたって
『本人いわく、二人は昔付き合ってたって言うんだけどねぇ…………』
一花さんとの後の6年間、あの後藤さんにだって他にもいろいろあるんだろう
「はぁっ………」
何だか集中出来ないでいる自分にイライラする
仕事で出張してるわけだし
それでも、本当に終始二人一緒にいたら…………
「…………万由っ!」
「えっ?!」
「聞いてる? 会議室の使用許可が取れてないってっ………万由、朝一で確認とってないの?」
「あ………」
しまった………
歩美が呆れたように額を手を覆い、盛大な溜め息をつく
「すみませんっ………」
会議室はまだ空いてるところがあったため、すぐに総務部に許可をもらい、急いで設営を手伝った
ああ………何やってんだろ私
資料だって直さなきゃいけないのに、残業はNGだけど今日やらなきゃ間に合わない。
帰る歩美たちに「後、もう少しだけ」と告げて、机に向かう
事務以外の社員たちはチラホラ残業している人もいれば、会議に行っている人もいるみたいだ
歩美さんたち企画部事務女子が帰って、自分だけ残っている状況に焦りを感じ、かえって業務にやっと集中できた
「…………終わったぁ」
おかげで残業ってほど遅くならずにすんだ