君が好きになるまで、好きでいていいですか?
一方の繋がれた手と反対の手が万由の頬を触ると、目の前にあった映画のスクリーンが慧斗の顔で見えなくなった
そうそう、こんな感じで……………え?
初めて感じる距離感に戸惑う隙もなく、角度が変わって
唇に柔らかく暖かい感覚が広がった
重なった唇が万由の唇を撫でるように、優しく包み込んで
時間が経っているのか、一瞬なのか分からない
ゆっくりと離れていく慧斗の唇が視界に入ってきた時、その状況へ意識が戻った
途端、カァッと顔から身体全体が熱くなった
「万由…………俺、万由のことが好きだよ」
「え……」
慧ちゃん?
ただ目を見開いて慧斗の顔を見るしか出来ない……………今、なんて?
優しい笑顔を向けられてるのに、言葉が出てこない
「小さい頃から、本当はずっと万由が好きだった、知ってた?」
ずっと? 小さい頃から?
ふるふると頭を振る万由
万由の座る助手席へ身を乗り出す感じの距離で話を続ける慧斗
「だから、ずっと万由を離したくなかった」
「……………」
でも慧ちゃん…………慧ちゃんには和音さんが
「…………でも」
「和音とは別れたよ」
「えっ?!」
今、いろいろな分析が混ざってて………解析出来ない
ちょっと待って慧ちゃん
「和音とは、もともと別れるつもりだったんだ。万由が好きだったから。」
「なんでそんな急に…………?」
そう聞く万由に言いにくそうな顔をする慧斗
「万由の…………万由の会社の奴が、告白してきただろ?」
「ん………」
後藤課長?
ずっと繋がれた手をグッと引かれて万由の身体が頭から慧斗の胸の中に引き込まれて
頭の後ろからキュッと抱きしめられた
「万由を獲られたくないから、あいつ男の俺から見ても格好よかったし………」
「慧ちゃん…………」