君が好きになるまで、好きでいていいですか?



息を引きつかせながら目を擦り、グズグズと泣く万由を前に

何人かの残業中の男性社員たちから、冷たく白い目で見られる浅野主任


「ねぇ、万由ちゃん。出来れば何があったのか説明してもらえないかなぁ……」

「ううっ………ひぃっく………」


溜め息をつきながら頭をぽんぽんと撫でる


「何があったか知らないけど、ヨシが君を嫌いになる事はないと思うよ」


覗くように見ながらそう言う浅野に、ふるふると俯いたまま首を振る


「…………私が悪いんです。私がどっち付かずで」



『付き合ってほしいって、無理言ったのは俺の方だからね。それにまだカレカノじゃないだろ。選択肢は万由次第だよ』


頭の中でその時の彼の表情と言葉が何度もリピートされて、そのたびに胸が痛くなる


理解してるのか解らない浅野は、万由を「よしよし……」と宥め

歩美の机の上にあるティッシュの箱さら渡し、暫く落ち着くまでそのまま待ってくれた


「…………ずみぃまぜん」


「いいよ。部下の恋愛相談を受けるのも上司の役目だからね」

そう言って苦笑いを向けてくれた


「あいつの恋愛音痴の原因を作ったのは少なからず僕だからね。」

「…………」

「慎重になりすぎて、絡まり過ぎてるんだろ。見てて本当に不器用で…………ん?」


「…………?」


携帯が鳴り、胸ポケットから取り出して着信を確認する浅野

「ごめん、ちょっと出ても構わない?」

一言そう言って万由の目の前で話し出す


「一花、どうした?」


どうやら一花さんからみたいだ

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