君が好きになるまで、好きでいていいですか?



「え…………妊娠………って本当に?」


一花さんは顔を伏せてグズグズと声をひきつかせるばかりなので、隣にいた看護士さんが事情を説明してくれた


「奥様、だいぶ動揺されているみたいで………」


いまのところ妊娠8週を過ぎて、つわりが始まっていただけで、何の問題もないらしいが、妊娠に対して一花さんが過敏になっていると…………


浅野が隣に座り、一花を優しく慰め彼女を抱き締める


「どうしてそんなに哀しんでるの?これから結婚するんだから問題はないし、俺は嬉しいのに………」


確かに、ついこの間4人で飲んでた時に主任は、既にプロポーズ済みで結婚するって………


「だって………由さんが………」



一花さんが顔を主任の胸の中に埋めてくぐもった声を出す


「……………」



一度、主任との子供を流産している一花さん
そのため、今の状況が前と重なっている事や、新見環さんの琉成君の事、それに会社での主任の立場など

また妊娠させて結婚なんて………今以上に立場が悪くなると心配しているらしい


順序を踏まずになってしまった、この状況でこの先の事を考えると、悲観的にしか思えない一花さん

この上、また流産してしまったら………と


「ごめん、由さん…………私、やっぱりポンコツで………」


いつまでも泣き止まない一花の顔を覗き混み、涙で濡れる頬を両手で覆う



「そんなこと、全部俺が何とかするから大丈夫。一花は心配しないで子供に会える事だけ考えてればいいよ」


優しく、いとおしそうに「大丈夫、大丈夫」と笑顔で一花を見つめる浅野


「6年前に行ってしまった子が帰ってきたんだよ一花。ネジはやっぱりうちにあったんだから」


ゆっくりと彼女を慰め、「これからは俺に任せて」と落ち着くまで背中を擦った

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