君が好きになるまで、好きでいていいですか?

産婦人科の前でのいかにも物騒な言い争い

周りからしてみたら思わず引いてしまうだろう


和音が立ち去って、残された万由に気を使いながら話し掛けてきた浅野


「…………すみません お騒がせしました」


「大丈夫?」

私はどんな顔をしていたんだろう
心配そうにそう声を掛けてきた一花さん


「彼女、赤ちゃんがいるのね。エコー写真持っていたから…………」


こんな場所で「下ろす」なんて口にした和音さんが、私に気づく前に写真に向けた表情が頭から離れない

彼女がどんな風に育ってきたのかなんて知るわけがない

でも、あの微かに頬を上げ綻んだ表情は、決して「要らない子」なんて事ないはず


それに

慧ちゃんが、この事を知って彼女を必要ないなんて言うだろうか?

私が知っている慧ちゃんは、私より彼女がほっとけないって言っていたのに

やっぱりちゃんと話さなきゃ………

「…………」



一花さんもすっかり落ち着いていた

ここに来て、妊娠に動揺する一花さんを落ち着かせたが、思わぬ事態に浅野主任だってこれから大変だろう



「万由ちゃん、会社での話が途中になっちゃってごめんね。 それにわざわざ一緒について来てももらっちゃって」

浅野が申し訳なさそうにそう言う


「いえ、私の事は大丈夫です。一花さんの身体、大事にしてください主任」


正直とっても喜ばしい事なんだもん

万由が笑顔をみせると、浅野に頭を撫でられた

「いろいろ悩んでないで、ちゃんとヨシと話し合ってね。話の分からない奴ではないはずから…………」


「………はい、そうですよね」


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