君が好きになるまで、好きでいていいですか?
そう思って、慧ちゃんに連絡を入れた
「連絡くれるの待ってたよ、万由」
慧ちゃんは、少しも昔と変わらない笑顔をしてくれた
気持ちが変わったのは私の方みたいだ
「…………慧ちゃん」
待ち合わせは駅近くのカフェだったのに
万由の会社まで迎えに来ていた慧斗
「傘がないんじゃないかと思って」
「天気予報見てきたから、ちゃんと持ってるよ」
これからどう話そうかと思うと、かわいくない言い方になってしまう
「とにかくこの雨だし、どこかへ入ろうか」
そう言って人と傘で騒然とした中を歩き出す
「あ、うん」
慧斗の後に続くと、
グイッ
「わっ?!」
後ろから腕を思いっきり引かれた
「万由?」
えっ…………?
引かれた腕の先からの声で振り返ると
「後藤さん?」
人の波や傘で、すれ違った事に気が付かなかった