君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「…………どこに行くの?」
腕を掴まれたまま、背の高いその視線は、明らかに慧斗を見ていた
出張から帰って、会社に寄るつもりなのか、その手には小振りのスーツケースを持っていて
立ち止まったすぐ近くには、山吹薫も一緒だった
「あの………今出張からの帰りですか?」
後藤を見上げてそう言うと、柔らかいいつもの笑顔を向けてくれた
「ああそうだよ、ただいま。万由は?」
「いい加減その手を放せよっ」
腕を掴む後藤の手に慧斗が手を伸ばすと、それをかわすように万由を引き寄せた
「君は、万由の元カレだね。彼女に何か用事?」
さっきの笑顔が一瞬で無表情に変わった
「ち、違うの後藤さんっ、私が彼に用事があって………」
「用事って?」
「万由の方から会いたいって連絡くれたんだ。お前には関係ないだろっ!」
立ち止まっている4人を人の流れが避けている中、腕を掴む後藤の手の力が、少し入った
…………ちょっと痛い
視線を慧斗から移し、万由の顔を覗き込むように身体を少し屈めた
「じゃあ、俺も行くから、場所を教えて」
「え…………?」
どうしたんだろう?
なっなんか、後藤さんらしくない…………
「なにいってんだっ…………」
「ごめんなさい、後藤さんっ!」
今にも掴み合いそうな雰囲気に万由が口を挟む