君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「今日は、慧ちゃんとどうしても話さなきゃいけない事があるんです。だから…………」
掴んでいる後藤の手を離してもらうように腕を引く
「…………………それが答え?」
えっ………?
ザワついている中で低い声が微かに堕ちた
「わかったよ」と後藤は、手を離し身体を翻した
ずっとそこに立ち止まっていた、山吹薫の方へ向かった
「悪かったね、行こうか」
彼女が「はい」と、待っていた後藤を見上げた
静かに、振り向かず背を向けられた
「あの、後藤さんっ………」
きっと、言い方が悪かったんだ
その背中の後を追おうとして、山吹に遮られた
「………あなたって最低ね」
そう言われ、冷たい目で睨まれた
「…………っ」
二人並んで会社へ入って行く背中を見つめた
また私………………どうしよう
「万由?」
慧斗の呼ぶ声も耳に入らず、行ってしまった会社を見て立ち尽くすままの万由に、
何度目かの呼び掛けをする
「万由っ」
手を取って初めて気付いた万由に呆れて息をつく
「話、聞くから。取り敢えずどこか入ろう」