君が好きになるまで、好きでいていいですか?
『あなたって最低ね』と
この間、そう吐き捨てる様に言った彼女の話といえば、当然後藤さんの事だろう
あれから彼を見掛けるたびに、この人が横についている
聞いたところによると、山吹常務を介しての大きな取り引き先の仕事を直接携わる事になったため、
もともと常務秘書の彼女も、一緒にアシスタントとして担当することになったらしい
「大した人よね、あなたも。ちょっと佳樹さんに好かれたからって調子にのって」
「………………」
「前にも言ったでしょ、なんで貴女なのって。やっぱり佳樹さんには相応しくなかったわね」
ベンチに座る私の横に立ったまま、腕を組んで見下ろしてそう言う
「別に、山吹さんには関係ないと思うんですけど。私たちの事は……」
そんな風に言われる筋合いもない
「私たち?」
その口から出てくる言葉は、嫌味でしかないと分かる様に失笑してみせる
「何か勘違いしてるみたいだから教えてあげる。あなたの立場」
「…………」
「分かるでしょ? ただの気紛れよ、佳樹さんの。だから迷走してる彼のこと、いい加減解放してあげてほしいの」
「気紛れって…………」
いくらなんでも失礼なんじゃない?
「悪いけど、彼は私と付き合ってたの。ずっと前からね」
「そんな話、わたし後藤さんから聞いた事ありませんけどっ」