君が好きになるまで、好きでいていいですか?

ダメだ、彼女にのせられては………そう思うんだけど


「嘘だと思うなら佳樹さんに聞いてみたらいいじゃない? 今はちょっとした気持ちのスレ違いなのよ私たち。だって、彼を理解してあげられるのはやっぱり私だけなんだもの」

そんな事、きっと人の挙げ足をとるだけの言いぐさに決まってる
今の私には、彼に聞く事が出来ないのを分かって言っているから


「気持ちのスレ違いって、じゃあ今は付き合ってないって事じゃないですか?」


まるで私が後藤さんの浮気相手みたいに言われてる?


「今も付き合っているわ、だって別れてないもの。昔は何度も朝まで一緒にいたりしたし、佳樹さんとても優しかったのよ」

しれっとした顔で首を傾げながらそう言う薫に、思わず視線を叛ける


彼女の嘘かもしれないのに、
自信あり気のその物言いに、嫌でも自分が惨めな気分にさせられる


「兎に角、私が言いたいのはね、これ以上彼に近づかないでほしいの。沢村さん
今の彼にとって、もうあなたは必要ないでしょ?」


そう言って、終止得意気に口元を上げながら人を見下す様に目を細めた


「…………」


悔しいくらい何も言えなかった

言いたい事だけ言って、戻っていく彼女の背中をただ見つめるだけだった


都合が良すぎるだろうか、今の私には後藤さんが何より必要なのに………
このままじゃ、誤解を解くことも出来ない

もう、本当に私は後藤さんに飽きられてしまったの………?


話を訊いてくれないほど、嫌われてしまったんだろうか………?


今更ながら、どうしてもっと躊躇せず、自分を出さなかったんだと思う……………けど



遅いよね………

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