君が好きになるまで、好きでいていいですか?
雨が今にも降りだしそうな天気に、いつもより早く部署に戻ることにした
気分も天気と同じ様に晴れないまま、ミスはしないよう、確実に注意深くやろうと、両手で思いきりバシッと叩いて気合いを入れ、部署のデスクに向かう
「あれ? 万由ちゃん早いね」
いつもならもう20分くらい屋上にいるためこの時間の部署に浅野主任がいることの方が珍しい
「主任こそ、早いですね。何か急ぎの仕事でもありました?」
既にパソコンの画面を付け、仕事をしている浅野
「コーヒーでも淹れますね」そう言って給湯室に入りコーヒーメーカーのスイッチを付け、セッティングをしていると、浅野が自分から給湯室に顔を出してきた
「出来る限り早く仕事を切り上げて帰りたいもんだからね」
そう言えば最近の主任は仕事熱心だ
夕方には会議ある以外は極力残業も減らして帰っていると聞いた
「あ、一花さんの具合はどうですか?」
「うん大丈夫、落ち着いてるよ。つわりが少しきついみたいだから、晩御飯は僕が作ったりしているんだ」
一花さんの話を出した途端、少し顔が緩んだ主任
ああ、そうだった。主任って見た目と違って家庭人だったんだ……
琉成君に対しての主任も確か甘口だったもんなぁ………
「今度、週末にも一花の実家に挨拶にいくんだけど…………」
コーヒーを手渡した主任が小さく溜め息をつく
「一花のオヤジさんって、前にヨシを殴ってるんだよなぁ………ここはヨシにアドバイス聞かなきゃいけないんだけど、なかなかなぁ」
「?」
はぁっ……とまた盛大に溜め息をついた