君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「……………」


「万由ちゃん?」


口を閉ざし困った様に俯いて眉を歪ませると、それ以上訊いてこない浅野

他の社員たちが何人か出社し始めたため、
仕方なく話をやめて、万由の頭をポンポンと撫でて給湯室を出ていった


「……………」


朝、山吹さんが自分は後藤さんと昔付き合っていたまま、まだ別れていないと宣言された事も頭に残って

それが本当かどうかを調べる事も出来ない


気持ちは、だんだん離れていくような気がする

せめて、あの時の慧ちゃんと事が説明できたら









日中、用事を頼まれ郵便局へ出掛けて、会社に帰る途中に営業事務の佐藤さんに会った

「沢村さん、会社に帰るところ?最近どう?」

佐藤さんとは前に総務部の三宅さんと一緒に飲みに行ったきりだった

同じ会社にいても、なかなか会えないものだねぇと、少しだけ立ち話を始めた

「後藤課長の出張の後も、ずっとあの秘書課の山吹女史がついてて、営業事務の女子社員たちは妬きもきしてるのよ」

なまじ、仕事の出来る秘書業務に加えて常務のお嬢さん

女子社員どころか、営業部男性社員さえ何も言えず、逆に課長への頼り過ぎを指摘されて動かされている状態だと話す佐藤さん


「あれじゃあ、まるで課長のアシスタントと言うより、もう女房気取りよぉ……」


私と後藤さんは既に別れたのかと聞かれ、それが山吹常務の仕組んだ出張が原因だと、訳の分からない噂までたっているらしい

「私は沢村さんの味方だからねっ」と、ガッツリと両手で握手されその場で別れた


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