君が好きになるまで、好きでいていいですか?
忙しい後藤さんでも、仕事の出来る山吹さんとならずっと一緒にいられるんだ………
余計な噂話までたっている事を訊いて、このまま本当に何もなく終わってしまうのかと、不安になった
「あ………」
玄関ロビーからエレベーターに乗り込もうとした時、一瞬足を止めた
…………後藤さん
出先から地下駐車場に社用車を置いてエレベーターに乗り込んだのか、万由の待っていたエレベーターに一人で乗っていた
ここで乗らない訳にはいかない
階数ボタン近くに凭れかかっている後藤の前から自分の階数ボタンを押し、微かに頭を下げてボックスの隅の後ろ側に立った
ゆっくりと扉が閉まる
久しぶりに話が出来る距離にいる彼なのに、妙に喉が詰まり言葉がでない
「…………最近忙しい?」
「えっ?」
話し掛けてきたのは後藤からで、ボックスの中の壁に凭れたまま、顔を上げた万由を見下ろしていた
まだ声がでないまま、首をふるふると振った
「そう」
「…………」
せっかくの会話が終わってしまう
「あの…………」
「ごめんね、俺の方が忙しくて」
万由が話す前に、そう言ってきた後藤
「いえ……」