君が好きになるまで、好きでいていいですか?
避けられていたと思って切なかった気持ちが、
目の前で言葉を掛けられ、正面から目が合わせられただけで、頬がカッと熱くなった
つい、俯いてしまった万由
「…………メールでいいよ」
「えっ?」
後藤が下を向いた万由から視線をエレベーターの階数表示に移しながら、そこから声が落ちてきた
「話があるって………用事」
そう言って上を向いたまま口を閉じた後藤
「……………メールで?」
後藤のその言葉に眉を歪ませる
それって、もう話したくないって事?
目の前で壁を作られた気分だ
「ダメです………」
泣きたい気分のまま、絞り出すように声を出した
「だって後藤さん言ったじゃないですかっ
手を繋がないと真意が伝わらないって…………」
そうだ、私はまだ何も伝えてないのに
咄嗟に後藤の手を取ろうと近付いた時
エレベーターが止まり、チーンとまだ押した階数ではない階で扉が開いた
「あっ、早かったんですねっ」
扉の前で待っていた山吹薫が後藤に真っ直ぐ視線を向け、エレベーターに乗り込んできた
「…………っ」
途端に後ろに退く万由
後藤が薫に目を向けると、逆に薫の方が万由にチラリと視線を向けた
「営業部に戻る前に、先にパパの所に一緒に来て下さい。この間の話で相談があるんです」
「相談?」
「はい、ムロイ工業での新規受注の話です」
二人のスムーズな会話にその場での言い様のない疎外感に苛まれた
「あっ、ちゃんと『山吹常務』って言わないとまた怒られちゃう。ふふっ……」