君が好きになるまで、好きでいていいですか?
弾ませた声で嬉しそうにそう話す山吹薫
もう少しで、後藤にちゃんと触れた上で話ができたのに
そう思いながら目の前に並ぶ二人を見れば、彼女の手が後藤の手首の袖裾を掴み、それがまるで指を絡ませている様に見えた
……………嫌だっ
万由の押したフロアー階数より下の階数で止まり、扉が開いたと同時に
その空間から逃げ出したくて、エレベーターから足早に降りた
「わっ!」
エレベーターの前に乗り込むつもりだった浅野にぶつかった
「あ、すみませんっ」
バタバタと用事のないフロアーに降りたまま、兎に角エレベーターから離れたかった
「あれ、万由ちゃん…………?」
「……………」
浅野が首を傾げながら、万由の行った方を気にしてエレベーターに乗り込むと、そこに乗っていた二人に目を細めた
「万由ちゃん、降りる階間違ってたんじゃないかなぁ………」
呟きながら低い声をだして、直接後藤に目を向けた
「…………」
万由が降りたフロアーは会議用の空きスペースで、煙草を吸うための喫煙室くらいであまり女性が立ち寄らない
「次の階まで階段で行くつもりじゃないですか? 健康志向なのかも。それとも煙草でも吸いに行くんだったりして………」
しれっとそう言う薫に、浅野が溜め息をつく