君が好きになるまで、好きでいていいですか?
遭えない理由と逢わない理由


「で、メールはしたの?」



居酒屋の木製のレトロなテーブルに、片手で頬杖をつき、中ジョッキをもう片方に持ちながら目を細める歩美に

そう言われ、両手で青リンゴ酎ハイを持ちながら口に持っていく万由



「…………する訳ないじゃん」


話の用事はメールでいいと、後藤に言われ、
それじゃぁちゃんと話が伝わらないと、しっかり反論する事が出来ずに終わってしまった会話


「なんで? 取りあえずメールしなきゃ、
もう繋がりがなくなるでしょぉ………」


呆れたように溜め息をつかれる


「だって…………」


あれから私の心は完全にまち針が刺さったまま

もう、恋愛に廃れた状態だ

歩美さんと二人で飲みに来た安い旨いの大衆居酒屋で、ただひたすら愚痴ばかりが口をつく

「大体、甘いのよ。昔から男の『忙しい』は98%嘘なんだから」


「うっ………」

慧ちゃんとの事を後藤さんに、ちゃんと話したくて送ったメールは、『しばらく忙しい』と返されて、何も出来なくなってしまった私


「万由の元カレの時と同じ、女から逃げるための言い訳なんだから」



「ふぅん………じゃぁ、あと2%は本当に忙しいってこと?ちょっと少なすぎるだろ」


「っ?!」


歩美の後ろから顔を出した高石


「二人で女子会?興味深いなぁ」


「高石………なんでこんなとこに?」


そう聞く歩美に、視線を別のテーブルに向けた高石
視線の先のテーブルには何人かの営業部の同僚がいた

< 273 / 333 >

この作品をシェア

pagetop