君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「いや………飲みに行かないですかって、課長も誘ったんだけど、今日は約束があるからって断られてね………」
「………」
「そう言えば、会社の玄関ロビーで待ち合わせみたいに待ってた山吹さんを見掛けたんだよなぁ………」
お酒のせいで、ついつい口が軽くなっている橋本さん
「え………山吹さんと?」
瞬時にエレベーター内での後藤の袖裾を掴んでいた、山吹薫の手を思い出した
「…………」
「で、でもただ山吹さんが待ってたただけかもしれないし、なぁっ………」
そう言って慌てて北川さんが、フォローをしてくれた
山吹さんとは約束して、仕事を終わらせたり出来るんだ………
そう思うと、心のまち針がチクチクと増えてくる
こころなしか、落ち込んだ表情を見せる万由に橋本が、
「奢るからこっちのテーブルに合流しない? 沢村さん」
と提案されたのを、歩美さんがいるからと、丁重に断った
「じゃあ……高石さんに、『戻らないと桜井さんにナンパしてるって言っちゃうよぉ』て伝えておいてね~」
北川がハハッと笑いながら、冗談紛れにそう言って、お互いそれぞれの席に戻った