君が好きになるまで、好きでいていいですか?

そう思いながら下唇を噛む万由に対して、ニヤリと頬を上げる歩美


「そうね、今日しかないかもね………
でも、もう少し考えなきゃぁ。会ってすぐちゃんと言いたい事言って自分のペースに持っていける?」


「……………うっ」


確かに、実際会わなきゃくらいしか考えてなかったかも


思わずストンッと腰を下ろした


歩美はまだ万由の手を掴んだまま

「大丈夫、とっておきの方法を教えてあげるから、ちょっと聞きなさい」


そう言われて顔を上げると、声を落とし近づいてくる歩美に耳を傾ける

このまま話に行って、また話がスレ違ったりしたらって


「そんな事になったら、もうとりあえず…………」


「へっ?」

歩美が人差し指で唇を押して示す




「………………………」




「はぁっ?いや、それは………」

「話が噛み合わなかった時の保険よ」

そう言って万由の手を離す

「…………ぅんっ」

残ったカシスソーダを手に取ってクィッと一気に飲み干し、気合いをいれた


「行ってくるっ」

歩美の言った事はともかく、自分の分のお金を置いて席を立った


手のひらをフルフルと振った歩美に見送られ『Room 』に向かった




***

「なぁ………なんで後藤課長のさっきの電話のこと、沢村さんに言わなかったんだ? 別に捜さなくても課長に電話すればすぐ会えるだろ?」


万由が行ってしまったのを見計らって歩美にそう口を開く高石

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