君が好きになるまで、好きでいていいですか?

首を傾げる高石に、歩美はとりあえず注文していたジンフィズを店員から受け取り、クィッと流し入れた

「………歩美?」


「そう呼ばないで」


「………沢村さん、ちょっと酔ってなかった? 大丈夫かなぁ」


はぁ…………と溜め息をついて顔を上げた歩美


「少し酔ってた方が勢いがついていいの、あの子は……………大体、ここまで来るのに何年かけてるってのよ、全く………」


呟くようにそう言う

「は?」


「1年半くらいよ、後藤さんが万由を見つめてたの………いい加減イライラしてたんだから」


初めはもしかして、自分が見つめられているのかと思ったくらいだった

でも、その視線は私を通り過ぎていて、見つめられている本人は全然気づかない


実際、確証がないまま1年以上経って、
たぶん万由の幼馴染みの存在のせいだとは分かっていたが、それを伝えるわけにもいかなかった


やっと告白してきた思ったら、当の万由はその気にならずに断っちゃうし

幼馴染みと付き合いだしたのは、まあいいとして、すぐゴタついて別れちゃって


やっと納まるかと思ったら、何?
『お試し』って?!


なにやってんのよっ…………


「簡単に会ったってお互い自分を出せないでしょ? 危機感をこれでもかって持たせて…………もう、さらけださないとね。」


そう言う歩美に思わず関心する


「さすが恋愛マスター………じゃあさっきの『とっておき』も経験からか?」

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