君が好きになるまで、好きでいていいですか?


留守かもしれない、なんて思いながらも
中から人の足音がする

居るんだと思った途端、言い様のないほど心臓が飛び上がった



えっ?

あ、微かに聴こえる…………人の声?


『誰か来たみたいだ、ちょっと待って………』


後藤のそう言っている言葉が、その玄関のドア越しから聴こえた

「っ?!」

どうしよう…………やっぱり誰かと一緒みたいだ


逃げる暇もなく、ドアが開いた


「あれ、万由っ?!」


「っ!!!」



ドアを開けた後藤は、濡れた髪にタオルケットを乗せたまま

…………上半身は何も着ていない
下は部屋着らしいハーフパンツを

シャワーに入ってて急いで履いたんだ


中にいるのはやっぱり山吹さん?


「ごっ……………ごめんなさい!」



あれだけ気合い入れて、たとえ山吹さんがいても、話だけでもなんて思ってたけど


無理だ


無理だよぉ………



すぐに、ドアから身体を引いて逃げ出した

あの格好で、奥の部屋にはきっと山吹さんがいて、二人の親密な想像しか出来なくて、グッと堪えた拍子に涙が溢れだした


「ちょっ…………万由っ待って!」


反射神経は後藤の方が上だった


< 297 / 333 >

この作品をシェア

pagetop