君が好きになるまで、好きでいていいですか?

パンパンに膨れた心臓が萎んでいき、
涙袋に溜まっていたのを急いで手で拭った 

落ち着いても、まだドキドキする状態は続いているままで


「万由……?」

名前を呼ばれるだけで、また涙が出てきそうだ

「あの………話をしたくて」

ちゃんと、話そうと来たはずなのに言葉が出てこない

玄関に入れて貰ったものの、靴を脱がないままで、その場で佇んでいる時間が長く感じる


「万由、顔が赤いね。飲みに行ってたの?」


顔を覗き込みながら、そう訊いてきた後藤

「はい、歩美さんと飲みに………」

「そう、何度か電話したんだけど気づかなかった?」


へっ?電話…………?


咄嗟に鞄の中の携帯を確認すると、確かに着信が………

「すみません、気が付かなかったです」


「…………なんだ、もう愛想尽かされたと思った」

そう言って自嘲する後藤

「……………」


とにかく中へ、と身体を翻した後藤の腕を今度は万由が引っ張った

「後藤さんは、山吹さんと一緒だったんじゃなかったんですか?」


「え、ああ一緒だったけど………」

ハッキリそう答えられ、思わず手を離した

「今日は先輩と約束してて、一花の妊娠の事を聞いたんだ。でも、山吹さんが会社からどうしてもついて行くってきかなくて………」


「そうですか………………」


たぶん、言った通りなんだろう。
後藤さんのスケジュールを分かった上で、ロビーで待ち伏せていたんだ山吹さん

勝手についてきたってことだろうけど、
そんなのズルい


事実を素直に言ってくれたのに、全然気持ちがスッキリしない、モヤが掛かったままだ

これは嫉妬?

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