君が好きになるまで、好きでいていいですか?

一歩、スッと近づいてきた後藤に

思わず肩からちょっと引いてしまった


それを見てフゥッと一息つかれた



「俺だってずっと考えてたよ、仕事をしてても手につかなかった時もあったし、自分よがりじゃないかって………」


「自分よがり?」

見上げた後藤の目が笑ってない笑顔に心が痛い

「付き合ってる事にしようっていうのは、単に俺の独占欲で、万由の気持ちはまだ元カレにあるって分かってたって、それを認めたくなくて………」


だからちゃんと話を聞こうとしてくれなかったの?


ゆっくりと節のある大きな手のひらが、ふわりと万由の頭を撫でた


「君はどうしたら俺を好きになってくれる?」


「……………」

目を伏せてそう切なく呟く様に言った後藤がスッと手を離した



「話は明日にしよう。今着替えて駅まで送って行くよ、今日は遅いから…………」


今度はいつもと変わらない口調でそう言った後藤に万由は、
徐に手を伸ばし首にかかるタオルケットの両端を掴んで、後藤の首を引き寄せた


「…………え?」


背の高い後藤の首が下がり、その唇に背伸びした万由の唇が重なった



『後藤さんの中の万由のイメージを壊してみたら?』

歩美からの助言だった



『いっそ、思いきって噛みついてみなよ』


そう………噛みつく勢いで目を閉じ、舌を少しだけ巻き入れて後藤の唇の上ではむはむと啄む



歩美の教えてくれた『とっておき』のキスのしかた



素直に「好き」を唇に乗せて伝える



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