君が好きになるまで、好きでいていいですか?


「…………」




「ん…………っ?!」


無理な体勢だったはずの背伸びが、クィッと押し上げられ楽になって、啄んだ唇がいつの間にか絡めとられる

背中に回った後藤の手で引き寄せられ、キスが深くなった

自分から仕掛けたはずが、相手のペースにのまれていく


今頃になってお酒のせいなのか、足に力が入らず気がつけば玄関のドアに背中が凭れかかって、既に逃げ場がない…………


「は…………ぁっん……」

息が続かないで、声が漏れる


ダメだ
キスで彼に勝てるはずがない


手を後藤の頬に伸ばし触れると、ゆっくり唇が離れた


そのまま背は玄関に凭れ、少し屈んだ後藤の腕の中で顔を覗き込まれた



「万由………さっき俺が言ったこ………」


「ズルいっ」

低く強い口調での後藤の声を遮った


「後藤さんはズルいです。全部自分で言いたい事だけ持っていって、私の事なんて分かってないじゃない………」

俯くのをやめ顔を上げて、後藤に目を合わせ、
またその首に掛かるタオルケットをグィッと引き寄せた


「く……………万由?」


「私のこと買い被り過ぎです。本当はもっとずっとチョロいんだから
だって、もうとっくに後藤さんの事好きになってるし、だから無視されて、ずっと寂しかったし………」


その目の前の胸の中に顔を埋めた



「どうして元カレに気持ちがあるなんて、
決めつけるんですか?
私は後藤さんが好きです………」



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