君が好きになるまで、好きでいていいですか?

言いきって暫く経って低い声が堕ちてきた


「……………本当に?」


「嘘ついてどうするんですか………」

遠慮がちだった後藤の腕が万由の背中に回り、キュッと引き寄せられた


「ヤバい………泣きそうだ」


「泣かないでください。気が付かれてなかった私が泣きそうです」


玄関のその狭い空間で、なんとも滑稽なバカップルぶりだ



「万由………キスしていい?」

そう言われて胸の中で顔を上げ、後藤を仰ぎ見た


「なんでイチイチ訊くんですか………?」


キスが出来る隙間をとって、そこから後藤の微妙に困った顔が落ちてきた


「たぶん歯止めが効かないから………」


「はどめ………って?」と最後までの言葉が分からないまま、唇が優しく塞がれた


やっぱり聞くだけでこっちの答えは訊かないんだから………



一瞬、ピカッと光った部屋が次の瞬間すべての電気が切れた


「え…………っ」



暗く静かな部屋の中に対して、玄関の外からは激しい雨の音が、雷の音と共に鳴り響いた

停電?…………それに外のすごい雨の音



すぐに電気はついたが、外の雨音は更に響く


「……………」


「今、電車動いてるか?」


帰れないよね………これは


「俺、酒飲んだから車は運転できないし」



只今の時刻は………22時を回ったところ


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