君が好きになるまで、好きでいていいですか?

「なんでそんな嘘ついたんだろう?」


「え?」

首を傾けて考える込む後藤

あんなに毎日アシスタントとは言え一緒にいて、周りが噂してたのにそれを彼女の嘘で終わるの?

食べかけのプリンをテーブルに置いて、ビールを持つ後藤の手を掴む


「正直に言ってくださいっ 今じゃなくても昔は付き合ってたんですよねぇ
何度も朝まで優しくしてあげたんですよねっ!」

詰め寄って、持っていたビールが溢れそうになって身体を引いた後藤にさらに攻め立てた

「山吹さんは、別れた覚えがないって言ってました。いい加減な付き合い方したまま私に告白してきたんですか?!」


「ちょっ………まっ」


そうだよ………好きになっちゃってからこんな事聞かされて、もう本当にどうしたらいいか分からなくなったんだから


「説明してくださいっ!」


勢いついて座ったまま後藤の両腕を掴むと、体勢が崩れて胸の中にすっぽり収まった

そのままキュッとそこに埋められ、頭の後ろを押さえ込まれ、身動きが取れなくなった


「万由………落ち着いて、きっと誤解だから」

そう言って背中をポンポンと宥めるように叩かれた


「男の人って、結局まずは惚けるんだ……」

頭を埋めた後藤の胸の中で、くぐもった声で言った


「……………」


顔が見えないまま、後藤が肩で深い溜め息をついた


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