君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「俺は惚けてるつもりはないよ、そうゆう事を惚けた誰かと一緒なのか?」
「……………」
黙っていると、より腕に力が入って潰されるくらい抱き締められた
「山吹さんと付き合った事はない。前の俺との縁談話も即断ったし」
「でも………山吹さん本人が」
おずおずと顔を上げると、目を細めてこちらを覗く後藤の顔があった
「彼女はあくまでも、常務の娘として接していたし、仕事でも特別な扱いはしてないつもりだったが、彼女がどう思っていたかは分からない」
「上司の娘と朝まで優しくしてあげたんですか?」
こっちだって怯むもんか
結構悩んで、眠れない日があったんだから
「朝まで? ああ…………家出の時か」
「家出?」
口調は幾分柔らかくなって頭をまたポンポンと撫でられる
「まだ山吹さんが会社に入社する前に、先輩が新見さんと結婚しただろ、それで父親の常務となぜか大喧嘩して家出したんだ、21歳のお嬢様を捜すように言われて見つけてファミレスで朝まで説得した。その後も何度か同じ事があって、そのたびに愚痴には付き合ったよ。」
「ファミレスで朝まで………?」
確かに、後藤さんが一緒にいてくれて『とても優しかった』って…………
「山吹さんがどんな言い方したか知らないけど、これ以上彼女とは何もないよ。
信用出来ない?」
「……………」
そうやって優しいから好きになる女の子がいるんだよね………
顔を埋めたまま、背中まで腕を伸ばしふるふると首を振った
「…………ごめんなさい」
「焼きもち?」