君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「万由、携帯鳴ってる…………」
その日は、ある晴れた休日だった
比較的仕事も落ち着いていて、後藤の部屋で土日とも過ごせる、まったりとした昼下がり
一本の電話から始まった
リビングに置いたままの万由の携帯が、パソコンを叩く後藤の前で鳴った
「はぁい」
少し早いおやつにしようと、コーヒーを入れて近所の洋菓子店で買ったチーズケーキの用意をしていた手を止め、
リビングに目を向けた
「なんだ、万由になんか用か?」
『……………』
は…………っ?!
万由の携帯が鳴ってると言った後藤が、その電話に出て通話していた
「ちょっと………ええっ、佳君それ私の携帯!」
奪い捕ろうとすると、立ち上がって万由より高い位置で携帯を上げる
「佳君っ!」
電話口まで聞こえる声で携帯に手を伸ばす
『「佳君」って………三十路過ぎた男が、
確か俺の「慧ちゃん」って呼ばれてるのに対抗してだっけ? クックッ………』
「用件は?」
万由の、頭を押さえながらムッとして話す後藤
『万由に代わってもらえないですかねぇ……
あなたに話してもいいんですけど、確実に嫌われますよ万由に、いいんですか?』
「……………」
『今更口説いたりしませんよ』