君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「佳君っ、返して!」
ゆっくりと耳から下げてその携帯を万由に返した
『クックックッ…………大変だな万由』
電話口から慧斗の笑いを堪える声がする
「ごめん…………」
溜め息をつきながら、電話を返してリビングから出ていく後藤を見つめる
『久し振りだな。元気そうで……』
また思い出したように笑う慧斗
「本当に久し振り。どうしたの?」
母親同士は仲がいいため、お互いの近況については耳に入る
慧ちゃんは暫くして、和音さんと結婚して二人で住む広いマンションに引っ越した
慧ちゃんのお母さんの住む場所から歩いて行き来できる場所らしい
結婚式は、親しい職場関係の人たちとレストランで、御祝い程度で済ませたと聞いた
さすがに幼馴染みとはいえ、元カノだし
多少職場の人に顔がわれてるから、母親にちょっとした御祝いの品だけ渡してもらった
それからは連絡なんてとっていなかったけど、別に携番を消すこともなかった
しっかりとリビングのローテーブルの上で鳴る携帯の着信名の『慧ちゃん』が表示されていた
『今朝、産まれたんだ。子供、女の子』