君が好きになるまで、好きでいていいですか?
短い時間で急いで会社に戻ると、1階ロビーで女子社員に囲まれたあの朝の後藤佳樹がいた。
「お~、相変わらず囲まれてるなぁ………」
小声で歩美がそう言うと、万由も視線を向けた
そうそう、いつもそんな感じのこの人見掛けてたんだっけ
ポケッと何気に見つめていると、歩美に腕を引っ張られた。
「あんた何見つめてんの? あの状態でもし向こうが気づいて手なんか振ってきたらどうするの?!」
「?」
さっさと隠れるように、エレベーターに乗り込んだ
「…………なんで?」
「言ったでしょ血祭りだって、後藤さんの両脇キープしている二人は
営業部事務の桜井亜沙美と、秘書課の山吹薫。
あの人たちに睨まれたら最悪なんだから」
その二人の後ろには、何人かまだいるんですけど………その人達はお付き?
「別に付き合う気ないもん」
私には遠い世界のお話だ
大体、私との接点ないじゃん。こうして、スレ違うくらいだし…………
「万由…………」
歩美がポンポンと、万由の頭を小突く
「万由は、結構可愛いよ。仕事の覚えも速いし器用だし、天然なとこも部署内の男性社員には好印象でモテてるのに………」
「…………」
部署に帰ってきて、午後の仕事のためにデスクのパソコンの電源を入れる
鞄から携帯を出して、机の端に置いた
「万由、携帯は机に仕舞っておきなさい。
あんたのモテない原因はそれなんだから」
「え~」と口を尖らす
「いつも同じタイミングでメールが入るだけなんでしょ。まるで彼氏からの連絡待ってるみたいじゃない。だから男寄ってこないんだから」
「だから、別に今はいらないし………」
「それだから24歳になっても天然処女なのよ………」