君が好きになるまで、好きでいていいですか?
元カノの残骸と残像ってどうよ。
歩美さんには、
『そんな事気にしないのっ。悪口の本当の気持ちは嫉妬なんだから』そう言って笑い飛ばされた。
「………で、万由はどうするの?」
「えっ?」
自分でぶつくさと話した、浅野主任に言われた仕事の話を、逆に慧斗に聞かれた
「あ………うん、まだ全然ピンとこない。だって、会社に入ったのは事務仕事としてだったから………」
その辺の話は正直歯切れが悪くなってしまう。
『総合職って言うと身構えちゃうかな、生活環境や交流なんかも変わってくるからね。
女の子は結婚や出産、育児なんかも考えなきゃいけないし。』
やっぱり、仕事に追われると結婚出来なくなるんだろうか
「万由がキャリアウーマンかぁ………なんか想像出来ないなぁ」
いつもの居酒屋のカウンター席で、頬杖をつきながら顔を覗き込んでそう言う慧斗
「そう思う?」
「思う。だって万由のお母さんって専業主婦だっただろ? 万由だって家事は得意だし。」
得意って訳じゃないんだけど、なんとなく慧ちゃんが片付けとか苦手だったし、うちによく来てたからやっぱりいいとこ見せたいじゃない。食事の手伝いとか………
「まあ、今は結婚しても共働きは当たり前なんだけど、でも万由は今の会社、総合職になってまでやりたい仕事だったっけ?」
一瞬、慧斗の『結婚』の言葉にドキッとした
「う~ん」
「結構大手の会社で、残業なしなんだから、そのままでいいんじゃない?結婚しても続けてる人いるんだろ。福利厚生もあるし、産休だってとれるんだし、わざわざ残業してまで人の上に立つのは大変だよ。」
なんだかさらっと、私の将来設計が含まれてる様な気がする
今日は金曜日で、時間がたつほど居酒屋が込み合ってきた。
「あのさぁ……けいちゃ………」
「宮下? 宮下じゃないかぁっ」
入り口から入ってきた6、7人の一人が慧斗を呼び止めた
「………先輩?!」
どうもみんな会社の人達らしく、一番先頭に入ってきた少しほろ酔いの先輩が、万由たちのところへズカズカとやって来た。