君が好きになるまで、好きでいていいですか?
万由を目にした後、慧斗に絡んできた。
「なんだお前、俺の誘いは断っといてこんなところでデートか?」
「なに言ってるんですか。用事があるって言ったじゃないですか。」
万由に近づかない様になのか、慧斗がカウンター席から離れて先輩の前に立ち塞がった。
その制止に逆らうように背の高い慧斗の肩越しからまゆを覗き込んでくる
万由は、目の合ったその先輩に軽く会釈をした
「椎名っ!旦那が浮気してるぞっ」
え…………椎名って?
後ろの会社の人達の中に向かってそう言った先輩の先を見ると、そこに和音がいた。
…………ウソ、居るじゃん
一瞬、目が合って直ぐに逸らした
旦那って………?
居心地が悪くて、肩を屈める万由に振り向いて「ごめん」と耳打ちする慧斗
「和音と別れた事、会社でもまだ知らない人もいるんだ、だから」
「…………」
ちょっといってくる。待ってて、そう言って会社の人達を押し戻しながら広いテーブル席に紛れていった
和音さんのいるテーブルに行っちゃったよぉ
いつものように会社に慧斗を捕られた気がして、モヤモヤと嫌な気分になる
会社と私、どっちが大事なの?って台詞
私は絶対言わないけど
………なんか気持ち分かるかも
「なぁ、あんたが宮下の新しい彼女?」
会社の人達の中にいた一人の男が、万由の方に近づいてきた。
「…………」
さっきの先輩の『旦那』発言で、幾分気分が悪いのにかかわらず、その男も明らかに万由を良くは思っていない口調だった
「あんたって、金曜日の女だろ」
金曜日の女……?
「宮下って椎名と付き合ってた時も、金曜日は別で早く帰るように調整してたもんな」
「………………」
「粘り勝ちかぁ?どうやって椎名から宮下取り上げたんだ? 色仕掛けかなんかだろ、あんた顔はかわいいもんな。しつこく迫ったんだろ」
なにそれ………まるで私が悪いみたいに
慧ちゃんとの付き合いは私の方が長いのに
それにどう言われようが、今慧ちゃんと付き合ってるのは私なんだから………
一旦、顔を伏せて俯いた万由を覗き込んできた