君が好きになるまで、好きでいていいですか?
「椎名に謝れ」
「なっ?!」
なんで…………?!
万由の隣でカウンターの机をバンッと叩く
「あいつら、仕事もプライベートも相思相愛で、何もかも上手くいってたのに………
今頃出て来るなよ! 椎名が可哀想だろっ。
あいつには宮下だけなんだから」
「…………っ」
「町田君っやめなさい!」
その男の後ろから声を出してきた和音
直ぐに、その男の服を引っ張っり遠ざけ様としてくれた。
「………ごめんね。万由ちゃん、この人酔ってるから」
「…………いえ」
初めて喋った………
「なんで椎名が謝ってんだ?! 謝るのはお前だろ、この泥棒猫がっ!!」
「………っ!!」
「町田君っ!!」
和音の制止も聞かずさらに詰めよってくる
やだっ………怖い!!
「なにしてるんだっ! 離れろっ!」
ガタガタと音をたててその男が倒れ、気配が消えた
慧斗が万由に怒鳴りつけるその男を引っ張り投げ飛ばした。
「万由、大丈夫か?!」
顔を伏せていた万由の背中から、慧斗の声がして…………
ホッと力が抜けた
「…………慧ちゃんっ」
慧ちゃんの後ろにいる和音さんの視線
それを見逃す訳がない
今、慧ちゃんの彼女は私なんだ
万由が慧斗の腕に、しっかりとしがみついた
「帰るよ。和音、町田を頼む。悪かったな」
「ううん、万由ちゃんごめんね。」
慧斗を見上げた後、万由にそう言って心配そうな顔を見せる和音
「……………」
慧斗に連れられて、店を出た。
あの町田とかいう慧ちゃんの会社の人の言った事が気にならない訳がない
『あいつら、仕事もプライベートも相思相愛で、何もかも上手くいってたのに………』
でも、慧ちゃんの彼女は私だ
何度も自分に言い聞かすようにそう思うのに…………
なんで和音さんに悪かったなって、だって会社はみんな和音さんの味方じゃない。