君が好きになるまで、好きでいていいですか?


「和音………俺が万由と会うと壊れるんだ」


「……………どうして?慧ちゃん関係ないじゃないっ」

私が帰ったら確実に彼女のとこに行くんだろう………そんなのおかしい


「あいつも、いろいろあって情緒不安定なんだ、だから………」


bububu………bububu………


二人で慧斗の携帯に視線を移す


携帯の着信は、和音ではなく会社の人からだった。

慧斗がその電話に出て話していると、次第にみるみる顔色が変わっていった

「あのバカ………っ」

慧斗の焦った様子に、万由もまた不安になる


何かあったんだろうか…………

「………………」



電話を終えた慧斗が、手で顔を覆い項垂れる

「………慧ちゃん?」


「ごめん…………万由行かなきゃ………」

「慧ちゃん?」

私をさりげなく遠ざけていた理由がそこにあるのか? 
兎に角、何かに囚われている様な彼がいる


「…………和音が階段から落ちたって、居酒屋で他人に絡んで」

「えっ?!」



「幸い2階からで、結構酒飲んでて………だから…………………」


いつも余裕のあった慧ちゃんが少し動揺している…………

自分の家庭の事だって
『万由が心配する事ないよ。俺は大丈夫だから。』って

私に弱いとこなんて見せた事なかった


「慧ちゃん………」



「ハァッ」と深呼吸をするように大きな溜め息をついて顔を上げる慧斗

以前後藤が言った何気ない溜め息の話を思い出す

慧ちゃんは、こうやって自分で落ち着かせてたんだ………


「……………」

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