君が好きになるまで、好きでいていいですか?
会社の中から出てきた女性、慧斗を呼ぶその声に万由はビクッと肩を揺らした。



「よかったぁ、もう慧斗じゃないとらちが明かなくて…………」

こちらに歩いてきながら、ふと万由に気付いた


軽く会釈をすると、向こうもニッコリと笑顔を返してきた

「ああ、今日は金曜日だったね。えっと……万由ちゃん?」


一度、慧斗の方を見てから頭をコクンと下げた

金曜日は私と会ってる事、知ってるんだ……
3歳しか違わないのに、なんか大きな差を感じる

「…………」




慧斗が万由の隣から、スッと和音の方へ向かう

「何とかするのがお前の仕事だろ。ったく、クライアントくらいちゃんと対応しろよ!」

「そんな事言ったって…………」

和音の手が慧斗の腕の袖口を掴む


「……………」

二人が会社の中へ向かうのを見ながら、万由はそこに立ち尽くしていた
「万由っ!」

それに気がついた慧斗が、和音の手から翻して万由のところに戻ってきた

「中においで、万由」

「…………すぐ終わる?」

慧斗は、うーんと眉を歪ませる


「…………じゃあ、もう少し桜見てる。大丈夫、寒くないから」


そう言う万由に、あまり賛成できない様子で頭を掻く

「…………………じゃあもし、変な人に話し掛けられたり、絡まれたりしたらすぐ中に入って来なよ。」


「うん、分かった」

笑顔で手を振っている万由を見ながら、慧斗は心配そうな顔をして、中へ入って行った




……………私はずるい

だって、外で待ってればきっと、慧ちゃんは心配で仕事を早く終わらせなきゃって思うはずだから…………

それに、和音さんと仕事してるそのスペースに入りたくない。


そこでは確実に、カヤの外だから……………



「はぁ…………」

桜を見ながら溜め息をつく


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